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試写会「光州5・18」 [映画]

4月29日(火)  昨夜は、そごう劇場で「光州5・18」という試写会へ行ってきました。そごう劇場は、そごう百貨店の心斎橋・本店の14階にあるこじんまりした劇場です。

この映画は、1980年に韓国の南西部の光州市で起こった民主化運動の悲惨な事件をテーマとしていますが、単なる歴史的な出来事のドキュメンタリー映画ではなく、いろいろな人間関係(兄弟、恋人、父娘、母子、家族など)の愛の絆を描く感動作品に仕上げています。

よって、光州事件の前後の経緯については、詳しく映画では触れていません。映画を理解し易いように前後の経緯を記述します。
1979年10月26日、朴正熙大統領が金載圭中央情報部長に暗殺される
同年12月12日、全斗煥保安司令官が戒厳司令官を逮捕、国防長官も拘束し韓国軍全軍を掌握する。(粛軍クーデター)
1980年4月14日、全斗煥が中央情報部長も兼務
同年5月14日、ソウルで5万の学生が戒厳令解除と改憲を求めてデモ
同年5月16日、光州市で5万の学生・市民が民族民主化聖会のためのたいまつ大会参加
同年5月17日、戒厳司令部が非常戒厳令を全国に拡大
同年5月18日、戒厳司令部は金大中、金鐘泌らを逮捕、金詠三を軟禁。政治活動の停止、言論・放送の事前検閲、大学休校など発表。第7空挺旅団が光州市に配置、朝、全南大学前で学生と衝突。昼前、デモ隊と機動隊が衝突。午後、空挺部隊が学生を鎮圧
同年5月19日、第11空挺旅団が追加。デモの主体が市民へ(鉄パイプ、火炎瓶などで)
同年5月20日、群集は膨れ上がり、車を倒し、バリケードを築き、軍隊と市街戦の構え
同年5月21日、市民は武器庫を襲う。TNT爆弾を奪う。全羅南道庁を占拠。軍は一時撤退。周囲を遮断し、孤立化をはかる。
同年5月22日、軍が光州市包囲。市民収拾対策委員会を組織、市民意見対立
同年5月23日、24日、市民大会
同年5月25日、市民大会で光州民主民族抗争指導部を結成。金大中の釈放、戒厳令撤廃を要求し、徹底抗戦を決議
同年5月26日、軍は戦車で市内浸入開始
同年5月27日、軍が市内全域制圧。多数の死傷者。
同年5月28日、数千名の市民が逮捕・拘束
同年8月、金大中に死刑判決。後に無期へ減刑
同年9月、全斗煥大統領に就任
1988年11月、全斗煥は死刑判決。後に特赦となる。全斗煥は独裁者、虐殺者、汚職の人という印象が強い。
光州1.jpg

●「光州5・18」
2007年/韓国/121分
配給:角川映画
韓国公開:2007年7月25日(740万人)
日本公開:2008年5月10日
監督:キム・ジフン(製作費約12億円)

(キャスト)
カン・ミヌ(キム・サンギョン)両親を失いタクシー・運転手で弟を養う兄
カン・ジヌ(イ・ジュンギ)高校生の弟
パク・シネ(イ・ヨウォン)看護士。パク・フンスの一人娘。母死亡。ミヌの恋人
パク・フンス(アン・ソンギ)シネの父。元軍人。現在タクシー会社社長。ミヌの雇主
神父(ソン・ジェホ)光州市の聖教会の神父
視覚障害者の老母(ナ・ムニ)一人息子のチャンスの帰りを待つ
インポン(パク・チョルミン)ミヌの同僚のタクシー運転手、家族持ち
ヨンデ(パク・ウォンサン)タクシーの客。後にインポンと仲良しになる。
高校教師(ソン・ビョンホ)ジヌ達の学校の教師
医師(チョン・インギ)正義心のある医師。シネと共に戦場を駆け巡る
中佐(イ・オル)パク・フンスが軍人の時の部下で、パクフンスを崇拝

(ストーリー)
1980年5月、軍事政権下、空挺部隊が赤狩りに向かう。隊員は北へ向うと思っていたが、飛行機は南下している。

光州でタクシー運転手をしているミヌは、弟・ジヌを迎えに学校へ行き、ジヌを乗せて教会へ行く。そこでシネと出会い一目惚れする。

同じタクシー会社の運転手・インポンは、客・ヨンデに糞をつけられ憤慨している。(この映画の暗い深刻な一面を、インポンとヨンデが今後明るくコメディ面を出す役割を果たす)

教会の野遊会へミヌとジヌは行く。二人三脚でミヌは憧れのシネと組むことになる。その後、ミヌはシネを自転車の後部へ強引に誘う。これを見ていた弟・ジヌは、シネになりすまして、後部に乗る。ミヌは喜んで走り出す。ジヌはいたずらっぽく腕を巻きつける。後部にいるのがジヌと分かり、お互いに笑いこける。シヌと三人で遊園地で楽しく過ごす。

(戦車の隊列が農道を走っている)
ミヌは、優秀な弟・ジヌがソウル大学法学部へ入ることを生甲斐にしている。ミヌは、シネが看護婦として働く病院の前で張り込む。勤務を終えて帰るシネを待ち構え、デートに誘う。(弟が勉強し過ぎで心配だ、一緒に映画を観に行ってほしいと)

ミヌは勤務シフトを金で代わってもらう。元軍人の社長パク・フンスは、ミヌに自腹で客を乗せたことを咎め代金をミヌへ返してやる。そしてミヌのデート代の小遣いも渡す。(ミヌは困っている人からは料金を取らず、自分で立替ていた)

5月18日、ミヌ、ジヌ、シネの三人は映画館で映画を観ている。その時、館内にガスが漂い、扉が開いて学生が逃げ込んでくる。その後を軍隊が追いかけてきて、棍棒で殴る。観客はパニックになり外へ飛び出す。そこでは、デモの学生と軍隊の衝突現場であった。

シネが隊員の一人に追いかけられた所をミヌが助ける。街には軍人がいっぱいなので、これから毎日送迎すると申し出る。

この騒動で、大学生でない高校生のジヌの親友サンピルが殺された。軍隊は不純学生と一般市民を区別せず棍棒で殴っていく。ジヌは闘うことを誓う。

ミヌは怪我人をタクシーで運ぼうとして、軍隊に捕らえられ、下着姿でトラックに乗せられる。途中車が橋を走っている時、ミヌは川へ飛込み逃走する。ミヌは民家に逃げ込む。そこは目の見えない老母が息子の帰りを待っていた。学校へ行ったきり帰ってこないといい、息子チャンスの写真を持っていた。

病院は怪我人が一杯、シネはその中で忙しく働いていた。ミヌはシネに会う為、病院へくる。シネはミヌの額の傷を縫ってやる。

シネはタクシー会社社長の父と二人きりで暮らしている(母は死亡)。父は元軍人の幹部であった。父は軍隊長(チェン・スキー)へ会いに行く。学生も人間だと抗議するが受け入れられない。

(これからネタバレします。これから映画観る人は読まないでね)
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(ネタバレします)

市内では、市民がデモしている。その中に弟ジヌを見つけたミヌは、殴る。しかし弟はサンピルが死んだと叫ぶ。ミヌはジヌの心情が分かり、殴ったことを謝る。
ジヌは「兄さんがやられたら復讐する」といい、ミヌは「お前がいないと生きる意味がない」という。
光州5.jpg

戒厳部の発表では、死者なしであった。
高校では、ジヌが先生に「止めても無理だ」という。先生は止める事をせず、生徒らに目の下に塗る薬を出し、塗ってやる(催眠弾でも目に染みない薬)。

5月21日、道庁前。市民と軍隊が対峙している。弟もその中で煽動している。
知事はヘリで放送する。「軍隊は正午に撤収する」。市民たちは、これを聞いて面白可笑しく軍隊をからかう。

正午、国歌合唱が始まる。その時、軍隊はいきなり市民へ向けて、無差別発砲する。逃げ惑う市民。弟ジヌは兄の目の前で撃たれる。制止もきかず兄は飛び出し、弟に駆け寄る。この時、シネの父が車で駆けつけ、二人を助ける。
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光州2.jpg

ミヌはジヌを背負って病院へ運ぶ。医師やシネが懸命に処置をしたが、ジヌは甦生しなかった。何か決意したミヌはシネに「ジヌを宜しく。やることが残っている。待たないで」といって立ち去る。

ミヌは車で武器庫に突入し、武器やTNT火薬などを略奪する。

怪我人が路上に大勢いるが救急車が出せない状況。その時一人の医師が立ち上がり、シネは私も行くと云って、救急車で現場へ向う。怪我人を運ぶ医師へ軍隊は容赦なく発砲し殺す。シネを見つけたミヌは救急車の傍へ走り寄る。この時、シネの父の機関銃の援護で逃げる。しかし二人の後を一人の隊員が追いかけてくる。追い詰められミヌが格闘している時、落ちていた軍の銃で隊員を射殺する。殺した事を知ったシネは「ごめんなさい」と号泣する。

5月22日、道庁前。市民が銃を手にしたので、軍は撤収する。市民はバンザイを叫ぶ。
広場に棺桶が並んでいる。シネは「すべてが夢ならいいのに」と呟く。ミヌは弟からの手紙を握り棺桶の前で泣く。目の見えない老母は、信じたくないように「うちのチャンスでない、違うよ」と号泣する。これらの様子を外国人記者がカメラに収めている。

シネの父は、市民軍の編成に立ち上がる。「勝利でなく、孤立だ」と呟く。
ミヌは道庁の屋上へ上がり、弔旗を掲げる。シネは献血を呼びかける。

束の間の平和の時。シネがリンゴを1個持って、ミヌの横に座る。ミヌが割ろうとするが割れない。シネがやると割れた(客席爆笑)。二人はこれを食べる。門前では市民軍が記念写真を撮る。テレビの報道では、死者ゼロであるが、ニューヨーク・タイムズでは事実が報じられていた。
光州6.jpg

市民軍の前線で警戒中(ヨンデが葦の中で排便中)、軍隊の戦車隊が一気に侵入してくる。そして市民軍と対峙する。

ミヌは局面打開の為、切札のTNTを軍隊へ送る。軍隊は戦車を一時撤収する。

シネの父はTNTを誰が送ったかといい「ミヌを殴る」。俺たちは暴徒か。
パク・フンス(父)は、軍部へ行き、将軍への面会を迫るが一蹴される。昔部下であった中佐は「隊長逃げて下さい」というが、パク・フンスは「ありがとう」といい戻る。

ここから、いろんな人の別れの場面が映される。同僚の運転手には家族がいるので家族を守れと帰す。ミヌは「恋する人。二度と失いたくない」という。パク・フンスはミヌに「シネを連れて帰れ」と命令する。

ミヌとシネは車に乗って街を出て行く。パク・フンスはこれを見届け、すべての門を閉めさす。シネは「父さん止めて」と叫ぶ。(ミヌはこの時、シネの父と知ったのでは)

途中のトンネルで停車し、ミヌは「やっぱり戻らないと。隊長を守らないと」。預かって下さいといい十字架をシネに渡す。「50年後に会いましょう」「明日の朝、迎えに来て」

郊外の市民居住地域では、シネが「愛する兄弟が戒厳軍に殺されています」と呼びかけ回る。
道庁では、隊長が最後の演説をする。「隣の人の顔を見よ。生きるため、勝つため」「皆と闘うことを、誇りに思う」・・・
ぞくぞくと一般市民が集まってくる。先生や神父も。それにミヌも「シネさんに頼まれた。隊長を守って」といって。
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5月27日午前4時。軍隊と銃撃戦が始まる。次々に市民軍は殺されていく。無線で互いに遺言をいう所が観ていても苦しいですね。隊長とミヌは、道庁の裏口へ向う。そして、境界の柵の中へミヌを押し入れ、鍵をかけた隊長は「シネを守ってくれ。頼んだぞ」といい戻って行く。ミヌは背中に向って「お父さん」と叫ぶ。(ハンカチのいる場面)

戻った隊長は中佐と出くわす。中佐は「なぜ戻ってきたか」、隊長は「俺は逃げる事を教えたか」というが、隊長は別の隊員に射殺される。

一方、裏口から外へ出たミヌは軍隊に囲まれる。「暴徒はすぐ銃を捨てろ」。俺たちは、暴徒ではない。といい銃を構えるが、一斉に蜂の巣のように撃たれ射殺される。

最後に、「私たちは、最後まで戦います」という文字が写される。

エンドロールでは、死後結婚式が映される。これは韓国では昔からある風習で、死者を弔う儀式だそうです。

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私は、この映画が韓国で大ヒットしたことと、一方日本では、「靖国」の上映自粛のことが対比して浮かびましたね。
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コメント 8

江戸うっどスキー

この映画を観ようかどうしようか迷っていますが、最後まで読んでしまいました。史実を元に制作しているのも、興味をそそられます。
by 江戸うっどスキー (2008-04-30 21:45) 

たいちさん

★shinwaさん、nice有難うございます。

★xml-xslさん、nice有難うございます。
by たいちさん (2008-04-30 22:43) 

たいちさん

江戸うっどスキーさん、niceとコメント有難うございます。
光州事件については、日本人はもとより、韓国人でも良く知らない人が多いとの事ですね。歴史を知ることは、よい事と思いますね。
by たいちさん (2008-04-30 22:46) 

collet

先日NHKのETV特集でチェジュの4・3事件を取り上げていました。
この光州事件に限らず、韓国にはまだまだ国民の知りえない過去が多いようです。
だって、真の民主化になったのはこの全斗煥政権が終わってからですものね。
その意味でもこの映画が韓国で大ヒットしたのがわかります。
じつは韓国版のDVDが手元にあるのですが、まだ観てません。
それで内容は読まずにおこうと思ったのですが、
チラッと見てしまい、みんな死んじゃうんですね・・・(ーー゛)
by collet (2008-05-01 13:07) 

たいちさん

colletさん、niceとコメント有難うございます。
隣国の歴史を我々は、あまり知りませんね。今、韓国ドラマブームですので、歴史を学ぶ機会かもしれませんね。
この映画は、残念ながらハッピーエンドではありませんでしたね。
by たいちさん (2008-05-01 17:26) 

たいちさん

★ぽりぽりさん、nice有難うございます。

★いとおさん、nice有難うございます。
by たいちさん (2008-05-03 01:49) 

non_0101

こんばんは。
覚悟してみたのですけど、予想以上にショックでした(T_T)
でも、この映画を観終わった時、きっと似たようなことが
今も地球のどこかで起きているのだろうなあと思ってしまいました。
せめて、今起こっていることだけでも見逃さないようにしなくては…ですね。
by non_0101 (2008-05-12 23:32) 

たいちさん

non_0101さん、niceとコメント有難うございます。
仰せの通り、現在でも似たような事件が後を絶たないですね。
by たいちさん (2008-05-14 09:40) 

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